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に覚えて頂きたいのは、そういった疑問を持つ時には必ず末端にいる人々のことを考えて下さい。行政のメリットになるのではなく、私たちがサービスしているのは末端にいる1人ひとりなのです。人間として、私たちは今社会に何ができるだろうか、そういった疑問を持つのが緊急事態(例えばマイアミではハリケーン)の被害にあった時だけ考えるのではなくて、日頃からお考え頂きたいと思います。
ハリケーンがあった時、タイムダラーはいろいろなボランティアのネットワークをしておりましたので、その時になって急に困るということはありませんでした。私たちのネットワークを利用しまして、直ぐさまハリケーンに対しての活動ができました。
私は8年間タイムダラーをやってきまして、こんな事が地域にもたらされた効果ではないかと言うことをお話しします。まず第1に、今まで依存者、社会のお荷物だと言われていた人たちが、社会にとっては大切な資産である、ということです。第2は見知らぬ人達と友だちになれたということです。いままで利用者であった人たちが、私たちがプログラムをつくってさしあげたことによって、活動者になっていただき、共同体を再構築することができました。住民の1人ひとりが共同体の一員であるということを再確認していただきました。それから1人暮らしのお年寄り達は孤独からの解放、もう寂しくなくなったとか、いままで埋もれていた才能やタレントとかが発掘されることになった、というメリットがあります。
3年経って、予算の都合上このプロジェクトが終わることになったとしても、お互いにマッチングしたお友達同士の友情は終わることがありません。

 

●タイムダラーは創造力あふれるボランティア

 

「タイムダラーはなんでしょう」ということを最後にもう一度申しあげたいのですが、タイムダラーというのは、とても単純なシステムです。1つのサービス1時間が1点、このサービスを通じて、今まで埋もれていた才能が発掘出来ます。例えば車椅子の方がいるとします。この方は今までは社会に依存していた人かもしれませんが、タイムダラーを通じて電話サービスのボランティアをしていますし、私たちと一緒になって病院を訪問してくださっている方もいます。また、学校へ行って子どもたちに本の読み聞かせをしている方もいます。
タイムダラーというのは、創造力を働かせればいろいろなアイディア、プログラムが生まれてくるものだと考えればよいでしょう。あと4年で21世紀になります。21世紀に向かってこれからは行政、企業、1人ひとりの市民が一緒に手を取り合って協力体制を組んでいく時ではないかと思います。アメリカ先住民族のインディアンの言葉に「人間は生まれて来るときは誰でも1人、死ぬ時も1人、その間とのように生きてきたかということがその人を創り、遺産として残すことができる」というものがあります。みなさんもどうぞご自分自身を形作って頂きたいと思います。タイムダラーはその1つの方法ではないかと自信を持ってお勧めいたします。ありがとうございました。

 

 

 

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